- 夢主はダンガンロンパV2を天海と共に生存したという設定です。
- 天海は記憶を失くしていますが、夢主は記憶を引き継いでいます。
七回目の学級裁判が終わった。自室に戻った私は、何をするよりもまずベッドに座り込んだ。
はあ、とため息が漏れる。今回の学級裁判は、すごく疲れた。疲れない学級裁判なんて無いけれど……。
『初めての殺人事件』『初めての学級裁判』を演じるのは存外難しかった。私と皆では、知っている情報と文脈が違いすぎる。犯人は絶対皆の中に潜んでいること。犯人は自分達の思いもよらぬ動機を持って殺人に臨んでいること。議論を重ねれば、いつか犯人の姿が浮かび上がってくること。そして、炙り出された犯人には必ず惨たらしい死が待っていること。全部、嫌になるくらい知っている。知らされている。
天海君を殺したのは赤松さんだった。皆のリーダー的存在だった赤松さんが殺人を計画していたのは、意外だったけど別に不思議なことではなかった。赤松さんは、才囚学園に閉じ込められていること自体を信じたくないのだろうな、という発言と行動をしていた。彼女は、コロシアイを否定するために殺人を選んでしまったのだ。
赤松さんが天海君を殺したことに恨みはない。いや、正確には『水鏡すみれが赤松楓に恨みを抱く理由はない』と言うべきか。私が誰かに個人的な感情を募らせれば、私と天海君の繋がりを見破られるかもしれない。なんだか今回は勘の鋭い参加者が多い気がする。いつかきっと私と天海君の繋がりは解き明かされるものなのだろうけど、それは今ではない。コロシアイは始まったばかりだし、それにまだ二人だけの秘密にしておきたい。
秘密……。天海君は私達の秘密を思い出す前に死んでしまった。今度も二人で生き延びたかった。天海君と色々なことを共有して、また彼の隣に立ちたかった。なのに、どうして――
「あまみくん……」
声に出してみた彼の名前に潰されそうな気持ちになる。落ちた自分の涙が床に落ちて、カーペットを濁らせた。見る見るうちにカーペットの色が変わっていくのを見て、変わり果てた彼の姿がまた脳裏に過る。大好きな天海君のことなのに、頭から離れてほしい光景があるという事実が既に嫌だった。
私が図書室に入った瞬間、それが死体であるということはすぐに分かった。でも、その死体が天海君だとは理解できなかった。信じたくなかった。これがどうか夢でありますように、なんて祈りは才囚学園では聞き入れられることはない。そんなことは痛いくらい分かっているはずなのに。
天海君――私のたった一つの道しるべ――だった人。その一等星の輝きは、潰えてしまった。私は、これから何を頼りに生きていけばいいのだろう。
「あまみ……く……んっ」
彼の名前を再び口に出した瞬間、私は箍が外れたように泣き始めた。俯いた頭を抱えて、髪の毛を引っ張った。自らの腕を痛いくらい握った。〝視聴者〟に何て思われるだろうと一瞬思ったけれど、とにかくこの気持ちは自分のものなんだとずっと確認し続けたくて、私は喉が焼けるまで泣いた。
2025/02/18