『こんばんはでござる、スミレ殿!』
携帯の液晶に通知が表示される。お風呂も上がって、ごろごろしながら動画を見ているときだった。
メッセージは、同じ学年でアイドル科の男の子の仙石君から。私が夢ノ咲学院の声楽科に転校してから初めてできた、男子の友達だ。『ござる』口調を自分でも使うくらい忍者が好きで、ちょっと変わってる。でも話してみるととっても人懐っこい性格で良い子スミレというのが今の彼に対する印象だった。
ひょんなことから友達になった私達は、つい数時間ほど前に二回目のお昼休みを終えたところだ。今日は思いの外話が弾み、今夜メッセージでも話そうと連絡先を交換したのだった。
通知が『仙石 忍がスタンプを送信しました』に変わったのが目に入ると、私はメッセージアプリを開いた。トーク画面に入ると可愛いカエルのスタンプが手を振っていたので、私も適当なスタンプを送り返し、返事を打ち始めた。
『こんばんは! 仙石君は今仕事が終わったところ?』
『お仕事自体は遅くなかったけど、ユニットの皆で打ち上げをしてたでござるよ』
『なるほど、お疲れ様!』『打ち上げいいな、何食べたの?』
『イタリアンでござる……☆』
携帯がぽんぽんと軽快な音を立てながら吹き出しを連ねていく。画面に白と緑の層があっという間に折り重なっていった。
『イタリアン美味しそう!』
『とっても美味しかったでござる♪』『スミレ殿もイタリアンお好きでござるか?』
『好きだよ!』『声楽科の友達ともたまに食べに行くよ』
学院から歩いて数分、駅前に集まる飲食店の中にイタリアンレストランがある。安くて美味しくて色んな街にある、有名なチェーン店だ。夢ノ咲学院生の溜まり場は、このレストランと近くのハンバーガーショップがツートップだ。
『おお、駅の近くのレストランでござるな?』
『そうそう!』『あそこ美味しいよね』
『拙者もよく行くでござる!』
ああ、晩ごはん食べたばかりなのに、お腹が空きそう……。なんだか食べたくなってきちゃったスミレなんて文字を打ち込んでいると、ふと今の時刻が目に飛び込んできた。
(えっ、もう十時?)
会話に夢中で気が付かなかった。明日も平日なので、学校がある。もし仙石君がさっき帰ってきたところなら、私との会話でお風呂や寝る準備を滞らせてしまうことになる。
『もう十時だね』『仙石君はさっき帰ってきたところ?』
『そうでござるな』
『ごめん、早くお風呂入って休みたいよね』
『いやいや、拙者からメッセージしたでござるから。』『スミレ殿とメッセージできて楽しいでござる!』
そんな言葉と一緒に、ニコッと笑った可愛いカエルのスタンプが送られてきた。仙石君の顔は見えないけれど、なんだか画面の向こうの彼の様子が伝わってくるようだ。
『まあでも、明日も学校でござるし。』『拙者、お風呂に入ったら今日はもう休むでござるよ』
『うん』
さっきのカエルのスタンプへのお返しのような気持ちで、私も可愛いスタンプを探して送った。ぽん、という音ともに会話が締まったような気がする。私はメッセージアプリを閉じて、さっきまで見ていた動画に戻った。
仙石君とメッセージするのは初めてだったけど、楽しかったな。近いうちに一緒にお昼ご飯を食べられたらいいなぁ……。忘れないうちにまたお昼ご飯を食べる日を決めよう。
そんなことを思いながら画面を見つめていると、メッセージの通知が再び届いた。
『えっと、スミレ殿さえ良ければでござるけど』
『よかったら、今度一緒にあのレストランに行きたいでござる!』
(!)
すぐさまメッセージアプリに戻って、返事を打ち込む。
『行きたい!』
私の送ったメッセージは、数秒後に既読が付いた。
『うわぁい! 嬉しいでござる!』
『じゃあ、次会うときまた日付決めようよ!』
『承知!』
今度こそおやすみなさいでござる、という仙石君のメッセージで再び会話が締められた。
最初仙石君からご飯に誘われたときはびっくりしたけど、彼と遊びに行けるのは嬉しい。学院に転校してから初めて声楽科以外でできた友達というのももちろんだけど、なんというか、仙石君と一緒にいると居心地が良いというか……とにかく時間が過ぎるのが早いのだ。それは仙石君にとっても一緒みたいで、だからこうして連絡先を交換するに至ったのだけど。
(今度新しい服買いに行こうかなぁ)
それまで寝転んでいた体を起こし、ぐっと伸びをする。それにつられたのか、あくびが自然と出た。
ちょっと早いけど、今日はもう布団に入っちゃおう。眠くなるまで服の通販でも見ようかな。
小さな楽しみに胸を膨らませた私は、携帯を手にしながらベッドに潜り込んだ。
携帯の液晶に通知が表示される。お風呂も上がって、ごろごろしながら動画を見ているときだった。
メッセージは、同じ学年でアイドル科の男の子の仙石君から。私が夢ノ咲学院の声楽科に転校してから初めてできた、男子の友達だ。『ござる』口調を自分でも使うくらい忍者が好きで、ちょっと変わってる。でも話してみるととっても人懐っこい性格で良い子スミレというのが今の彼に対する印象だった。
ひょんなことから友達になった私達は、つい数時間ほど前に二回目のお昼休みを終えたところだ。今日は思いの外話が弾み、今夜メッセージでも話そうと連絡先を交換したのだった。
通知が『仙石 忍がスタンプを送信しました』に変わったのが目に入ると、私はメッセージアプリを開いた。トーク画面に入ると可愛いカエルのスタンプが手を振っていたので、私も適当なスタンプを送り返し、返事を打ち始めた。
『こんばんは! 仙石君は今仕事が終わったところ?』
『お仕事自体は遅くなかったけど、ユニットの皆で打ち上げをしてたでござるよ』
『なるほど、お疲れ様!』『打ち上げいいな、何食べたの?』
『イタリアンでござる……☆』
携帯がぽんぽんと軽快な音を立てながら吹き出しを連ねていく。画面に白と緑の層があっという間に折り重なっていった。
『イタリアン美味しそう!』
『とっても美味しかったでござる♪』『スミレ殿もイタリアンお好きでござるか?』
『好きだよ!』『声楽科の友達ともたまに食べに行くよ』
学院から歩いて数分、駅前に集まる飲食店の中にイタリアンレストランがある。安くて美味しくて色んな街にある、有名なチェーン店だ。夢ノ咲学院生の溜まり場は、このレストランと近くのハンバーガーショップがツートップだ。
『おお、駅の近くのレストランでござるな?』
『そうそう!』『あそこ美味しいよね』
『拙者もよく行くでござる!』
ああ、晩ごはん食べたばかりなのに、お腹が空きそう……。なんだか食べたくなってきちゃったスミレなんて文字を打ち込んでいると、ふと今の時刻が目に飛び込んできた。
(えっ、もう十時?)
会話に夢中で気が付かなかった。明日も平日なので、学校がある。もし仙石君がさっき帰ってきたところなら、私との会話でお風呂や寝る準備を滞らせてしまうことになる。
『もう十時だね』『仙石君はさっき帰ってきたところ?』
『そうでござるな』
『ごめん、早くお風呂入って休みたいよね』
『いやいや、拙者からメッセージしたでござるから。』『スミレ殿とメッセージできて楽しいでござる!』
そんな言葉と一緒に、ニコッと笑った可愛いカエルのスタンプが送られてきた。仙石君の顔は見えないけれど、なんだか画面の向こうの彼の様子が伝わってくるようだ。
『まあでも、明日も学校でござるし。』『拙者、お風呂に入ったら今日はもう休むでござるよ』
『うん』
さっきのカエルのスタンプへのお返しのような気持ちで、私も可愛いスタンプを探して送った。ぽん、という音ともに会話が締まったような気がする。私はメッセージアプリを閉じて、さっきまで見ていた動画に戻った。
仙石君とメッセージするのは初めてだったけど、楽しかったな。近いうちに一緒にお昼ご飯を食べられたらいいなぁ……。忘れないうちにまたお昼ご飯を食べる日を決めよう。
そんなことを思いながら画面を見つめていると、メッセージの通知が再び届いた。
『えっと、スミレ殿さえ良ければでござるけど』
『よかったら、今度一緒にあのレストランに行きたいでござる!』
(!)
すぐさまメッセージアプリに戻って、返事を打ち込む。
『行きたい!』
私の送ったメッセージは、数秒後に既読が付いた。
『うわぁい! 嬉しいでござる!』
『じゃあ、次会うときまた日付決めようよ!』
『承知!』
今度こそおやすみなさいでござる、という仙石君のメッセージで再び会話が締められた。
最初仙石君からご飯に誘われたときはびっくりしたけど、彼と遊びに行けるのは嬉しい。学院に転校してから初めて声楽科以外でできた友達というのももちろんだけど、なんというか、仙石君と一緒にいると居心地が良いというか……とにかく時間が過ぎるのが早いのだ。それは仙石君にとっても一緒みたいで、だからこうして連絡先を交換するに至ったのだけど。
(今度新しい服買いに行こうかなぁ)
それまで寝転んでいた体を起こし、ぐっと伸びをする。それにつられたのか、あくびが自然と出た。
ちょっと早いけど、今日はもう布団に入っちゃおう。眠くなるまで服の通販でも見ようかな。
小さな楽しみに胸を膨らませた私は、携帯を手にしながらベッドに潜り込んだ。
2026/05/17発行
第2回夢道楽ペーパーアンソロジー企画参加作品